一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(Society for the Administration of Remuneration for Public Transmission for School Lessons:SARTRAS)は、その名称に示すように、著作権者および著作隣接権者のために、授業目的での著作物等の公衆送信利用に関する補償金を収受し、これを分配するわが国唯一の指定管理団体として、2019年2月15日、文化庁長官より指定を受けました。
授業目的公衆送信補償金制度は、新型コロナウイルス感染症による日本全国への被害拡大を受けて、特例として補償金の額をゼロ(無償)とする認可申請を急遽行い、2020年4月20日施行されましたが、本制度の本格運用は、文化庁長官による補償金額の認可を経た、2021年4月に始まるところとなりました。教育機関における著作物等の利用による補償金を教育機関設置者から収受し、著作物等のサンプル調査による利用報告の収集とその分析をした上で、既存の著作権等管理事業者や権利者団体である分配受託団体と整備協力団体の協力を得て著作物等の権利者を特定し補償金の分配を行います。ただ、分配初年度である2022年度以来、利用報告の分析と権利者の特定に時間を要したところがあり、権利者情報取得システム(MUSUBI)の開発と稼働を通じて、さらに利用報告受付システム(TSUMUGI)の開発を通じて、制度の改善に努めているところです。
授業目的公衆送信補償金の収受および分配と並んで、当協会の重大な責務として認識しているところとして、著作権および著作隣接権の保護に関する事業並びに著作物の創作の振興および普及に資する事業(共通目的事業)の適切な運用があります。この共通目的事業も初年度にあたる2022年度は委託事業1件、助成事業は全52件の申請に対し38件の助成を決定致しました。また、2023年度の共通目的事業にあっては76件の申請を受け、40件の助成を決め、二次募集の審査を始めたところです。
教育の質の向上は教育資源の質量に渡る充実が必要であるとともに、これら教育資源が教育の現場で活用されることが肝要です。活用された教育資源は、教員担当者の利用報告に基づいて補償金の分配に反映されます。分配された補償金により、さらに良質な教育資源が開発され、教育の現場で活用されるというサイクルが実現するよう、本協会は努めてまいりますので、教育機関設置者並びに教育担当者および生徒・学生の皆様のご支援とご協力を切にお願いする次第です。
2023年7月26日
一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会理事長・代表理事 土肥 一史