以下の改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)及び追補版は、機械翻訳用にWord版ファイルからテキストを抽出してSARTRASが作成したWebテキスト版です。
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改正著作権法第35条運用指針
(令和3(2021)年度版)

2020年12月
著作物の教育利用に関する関係者フォーラム

本資料は、教育関係者、有識者、権利者が参加するフォーラムでの意見交換、協議の中で、改正著作権法第35条を運用する際に使用する用語の定義等に関して、現時点で引き続き検討が必要な事項を含め共通認識が得られた部分を公表するためのものです。本資料の内容については、定期的に見直すことにしています。

同条でいう授業の過程における著作物の利用の条件については、今後も、共通認識の得られた事項を順次公表してまいりますので、参照される場合には、公表の年月をご確認のうえ最新のものをご利用ください。

目次

改正著作権法第35条
1.用語の定義 
①   「複製」
②   「公衆送信」
③   「学校その他の教育機関」
④   「授業」
⑤   「教育を担任する者」
⑥   「授業を受ける者」
⑦   「必要と認められる限度」
⑧   「公に伝達」
⑨   「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」
⑨―1 初等中等教育 10
⑨―2 高等教育 14
⑨-3 その他 20
 
2.学校等における典型的な利用例 21
 授業での利用の例 21
初等中等教育 21
A)許諾不要、無償で著作物を利用できると考えられる例 21
B)許諾不要で利用できるが、補償金の支払いが必要だと考えられる例 22
C)著作権者の許諾が必要だと考えられる例 23
 
参考資料 25
1 授業の過程における利用行為と授業目的公衆送信補償金制度(著作権法第35条)上の取扱いについて(文化庁作成) 25
2 著作権法における権利制限の例 26
3 関連法令、根拠法令等 28
(1)非営利の教育機関 28
(2)初等中等教育での「授業」 29
(3)高等教育での「授業」 31
(4)社会教育施設での「授業」 34
 
授業目的公衆送信補償金制度に関する参考資料 37
SARTRASのライセンスについて 37

改正著作権法 第35条

(2018年改正、2020年4月28日施行)

改正著作権法第35条は、「学校その他の教育機関」で「教育を担任する者」と「授業を受ける者」に対して、「授業の過程」で著作物を無許諾・無償で複製すること、無許諾・無償又は補償金で公衆送信(「授業目的公衆送信」)すること、無許諾・無償で公に伝達することを認めています。ただし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではありません。

<条文>

学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

3 前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第38条第1項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合において、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信を行うときには、適用しない。

※著作権法の定めにより、授業目的公衆送信補償金制度は著作隣接権に対しても準用されます。

※「引用」などの権利制限規定が適用される場合には、無許諾で利用できます。なお、本条のほか、デジタル方式による私的録音録画(30条2項)、教科書・デジタル教科書・営利目的の拡大教科書への掲載(33条、33条の2、33条の3)、営利目的の試験への複製・公衆送信(36条)、視聴覚教育センター等におけるビデオの貸出し(38条5項)等については補償金の支払いが必要です。

 

  1. 用語の定義

「複製」

手書き、キーボード入力、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により、既存の著作物の一部又は全部を有形的に再製することをいいます(著作権法第2条1項15号。著作物だけでなく、実演、レコード、放送・有線放送の利用についても同様です)。

該当する例 ・黒板への文学作品の板書

・ノートへの文学作品の書き込み

・画用紙への絵画の模写

・紙粘土による彫刻の模造

・コピー機を用いて紙に印刷された著作物を別の紙へコピー

・コピー機を用いて紙に印刷された著作物をスキャンして変換したPDFファイルの記録メディアへの保存

・キーボード等を用いて著作物を入力したファイルのパソコンやスマホへの保存

・パソコン等に保存された著作物のファイルのUSBメモリへの保存

・著作物のファイルのサーバへのデータによる蓄積(バックアップも含む)

・テレビ番組のハードディスクへの録画

・プロジェクターでスクリーン等に投影した映像データを、カメラやスマートフォンなどで撮影すること

 

「公衆送信」

放送、有線放送、インターネット送信(サーバへ保存するなどしてインターネットを通じて送信できる状態にすること(「送信可能化」を含む))その他の方法により、不特定の者または特定多数の者(公衆※)に送信することをいいます(著作権法第2条1項7号の2、2条5項。著作隣接権の側面では、実演を放送・有線放送、送信可能化すること、レコードを送信可能化すること、放送・有線放送を再放送・再有線放送・有線放送・放送、送信可能化することがこれに相当します)。

ただし、校内放送のように学校の同一の敷地内(同一の構内)に設置されている放送設備やサーバ(構外からアクセスできるものを除きます)を用いて行われる校内での送信行為は公衆送信には該当しません。

該当する例 ・学外に設置されているサーバに保存された著作物の、履修者等からの求めに応じた送信

・多数の履修者等(公衆)への著作物のメール送信

・学校のホームページへの著作物の掲載

・テレビ放送

・ラジオ放送

※一般的に、授業における教員等と履修者等間の送信は、公衆送信に該当すると考えられます。

 

「学校その他の教育機関」

組織的、継続的に教育活動を営む非営利の教育機関。学校教育法その他根拠法令(地方自治体が定める条例・規則を含む)に基づいて設置された機関と、これらに準ずるところをいいます。

該当する例

(カッコ内は根拠法令)

・幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校、各種学校、専修学校、大学等(学校教育法)

・防衛大学校、税務大学校、自治体の農業大学校等の大学に類する教育機関(各省の設置法や組織令など関係法令等)

・職業訓練等に関する教育機関(職業能力開発促進法等)

・保育所、認定こども園、学童保育(児童福祉法、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律)

・公民館、博物館、美術館、図書館、青少年センター、生涯学習センター、その他これに類する社会教育施設(社会教育法、博物館法、図書館法等)

・教育センター、教職員研修センター(地方教育行政の組織及び運営に関する法律等)

・学校設置会社経営の学校(構造改革特別区域法。営利目的の会社により設置される教育機関だが、特例で教育機関に該当)

該当しない例 ・営利目的の会社や個人経営の教育施設

・専修学校または各種学校の認可を受けていない予備校・塾

・カルチャーセンター

・企業や団体等の研修施設

「授業」

学校その他の教育機関の責任において、その管理下で教育を担任する者が学習者に対して実施する教育活動を指します。

該当する例 ・講義、実習、演習、ゼミ等(名称は問わない)

・初等中等教育の特別活動(学級活動・ホームルーム活動、クラブ活動、児童・生徒会活動、学校行事、その他)や部活動、課外補習授業等

・教育センター、教職員研修センターが行う教員に対する教育活動

・教員の免許状更新講習

・通信教育での面接授業[1]、通信授業[2]、メディア授業[3]

・学校その他の教育機関が主催する公開講座(自らの事業として行うもの。収支予算の状況などに照らし、事業の規模等が相当程度になるものについては別途検討する)

・履修証明プログラム[4]

・社会教育施設が主催する講座、講演会等(自らの事業として行うもの)

該当しない例 ・入学志願者に対する学校説明会、オープンキャンパスでの模擬授業等

・教職員会議

・大学でのFD[5]、SD[6]として実施される、教職員を対象としたセミナーや情報提供

・高等教育での課外活動(サークル活動等)

・自主的なボランティア活動(単位認定がされないもの)

・保護者会

・学校その他の教育機関の施設で行われる自治会主催の講演会、PTA主催の親子向け講座等

※履修者等による予習、復習は「授業の過程」とする。

※次の①~③は、授業の過程での行為とする。

①送信された著作物の履修者等による複製

②授業用資料作成のための準備段階や授業後の事後検討における教員等による複製

③自らの記録として保存しておくための教員等または履修者等による複製

※高等専門学校は高等教育機関だが、中等教育と同様の教育課程等について本運用指針での対応する部分が当てはまる。

 

「教育を担任する者」

授業を実際に行う人(以下、「教員等」)という)を指します。

該当する例 ・教諭、教授、講師等(名称、教員免許状の有無、常勤・非常勤などの雇用形態は問わない)

※教員等の指示を受けて、事務職員等の教育支援者及び補助者らが、学校内の設備を用いるなど学校の管理が及ぶ形で複製や公衆送信を行う場合は、教員等の行為とする。

 

「授業を受ける者」

教員等の学習支援を受けている人、または指導下にある人(以下、「履修者等」という)を指します。

該当する例 ・名称や年齢を問わず、実際に学習する者(児童、生徒、学生、科目等履修生、受講者等)

※履修者等の求めに応じて、事務職員等の教育支援者及び補助者らが、学校内の設備を用いるなど学校の管理が及ぶ形で複製や公衆送信を行う場合は、履修者等の行為とする。

 

「必要と認められる限度」

「授業のために必要かどうか」は第一義的には授業担当者が判断するものであり、万一、紛争が生じた場合には授業担当者がその説明責任を負うことになります(児童生徒、学生等による複製等についても、授業内で利用される限り授業の管理者が責任を負うと考えるべきです。)。その際、授業担当者の主観だけでその必要性を判断するのではなく、授業の内容や進め方等との関係においてその著作物を複製することの必要性を客観的に説明できる必要があります。例えば、授業では使用しないものの読んでおくと参考になる文献を紹介するのであれば、題号、著作者名、出版社等を示せば足るにもかかわらず、全文を複製・公衆送信するようなことについて、必要性があると説明することは困難です。また、大学の場合、教員が学生に対して、受講に当たり教科書や参考図書として学生各自が学修用に用意しておくよう指示した書籍に掲載された著作物の複製・公衆送信も、一般的には「必要と認められる限度」には含まれないと考えられます。

「必要と認められる限度」は授業の内容や進め方等の実態によって異なるため、ある授業科目で当該授業の担当教員がある著作物を複製・公衆送信等を行っており、別の授業科目で他の教員が同様の種類の著作物を同様の分量・方法で複製等をしたとしても、実際の授業の展開によっては、一方は「必要と認められる限度」に含まれ、他方がそれに含まれないということも理論的にはあり得ます。したがって、外形だけで判断するのではなく、個々の授業の実態に応じて許諾が必要か不要かを判断する必要があります。

また、「必要と認められる限度」に含まれるとしても、後述の⑨「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当する場合には、権利は制限されず許諾を得ることが必要となります。

「公に伝達」

公表された著作物であって、公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することをいいます。

該当する例 ・授業内容に関係するネット上の動画を授業中に受信し、教室に設置されたディスプレイ等で履修者等に視聴させる。

 

⑨「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」

改正著作権法第35条では、著作権者等の許諾を得ることなく著作物等が利用できる要件を定めていますが、その場合であっても著作権者等の利益を不当に害することとなるときには、補償金を支払ったとしても無許諾では複製や公衆送信はできません。これは、学校等の教育機関で複製や公衆送信が行われることによって、現実に市販物の売れ行きが低下したり、将来における著作物等の潜在的販路を阻害したりすることのないよう、十分留意する必要があるからです。つまり、「教育機関において行われる複製や公衆送信」、「教員又は授業を受ける者による複製や公衆送信」、「それが授業の過程で利用されるもの」、「授業のために必要と認められる限度の複製や公衆送信」という要件のすべてを満たしていても、著作権者等の利益を不当に害することとなる場合にはこの規定は適用されず、著作権者等の許諾を得ることが必要になります。

以下では、著作権者等の利益を不当に害することとなるかどうかのキーワード(著作物の種類、著作物の用途、複製の部数、複製・公衆送信・伝達の態様)ごとに基本的な考え方と不当に害すると考えられる例を、初等中等教育と高等教育に分けて説明します。

説明の中で、「不当に害する可能性が高い(低い)」という書き方をしているのは、この運用指針で示す事例が確実に著作権侵害になる又はならないということを保証するものではないからです。関係者の見解の相違があった場合には、個々のケースごとに、利用者がその行為について授業の目的に照らして必要と認められる限度であることを客観的に説明し得るか、又は権利者がその利益を不当に害されたことを客観的に説明し得るかによって判断せざるを得ません。また、示した例は典型的なものであり、これらに限られるものではありませんので、ここにあげられていないケースについては「基本的な考え方」や典型例を基にして個別に判断する必要があります。どのような場合に不当に害することになるかについての「基本的な考え方」は、教育関係者がこれに委縮して利用を躊躇してしまうことは改正法の意図するところではありませんが、逆に学習者にとって良かれと思ってというような安易な発想に立つのも禁物です。⑦で述べたように、当該教育機関の目標やねらいに照らして必要と認められる限度で著作権者等の権利が制限されますが、その範囲の利用であっても、その行為が社会における著作物等の流通にどのような影響を及ぼすかについて留意する必要があります。本項は、それを考えるために「基本的な考え方」を整理したものです。このような構造と考え方を理解していただけると、ICT活用教育に伴う著作物利用について、相当円滑に進むものと考えられます。

なお、ここに示したのは、第35条の規定に関する考え方であり、教育活動の中では、引用など他の規定の適用を受けて著作権者等の許諾を得ることなく著作物等を利用できる場合があります。

-1 初等中等教育

基本的な考え方

■著作物の種類■

○著作物の種類によって、そもそもこの規定を適用することが適切ではないものがあります。例えば「プログラムの著作物(アプリケーションソフトウェア)」です。学習用の市販のアプリケーションソフトウェアを一つだけ購入し、もしくは、1ライセンスのみ購入し、それを学校の複数のPCにコピーして使用したり、児童・生徒に公衆送信して提供したりすることは、プログラムの著作物という種類に照らして著作権者等の利益を不当に害する可能性が高いと考えられます。

〇この規定により著作権者の許諾を得ずに著作物を複製又は公衆送信する場合、複製又は公衆送信できる分量について「授業において必要と認められる限度において」と定められているところ、この要件を充足した場合であっても、市場での流通を阻害するような利用が著作権者等の利益を不当に害することとなりかねないことを考えると、著作物の種類によっては著作物の全体が利用できるのか、部分の利用に限られるのかが異なることもあります。このことについてどの著作物の種類が全部の利用ができるか、 あるいはそうでないかを網羅的・限定的に示すことは困難ですが、例を挙げながらその考え方を示します。

短文の言語の著作物、絵画及び写真の著作物などの場合は、全部の利用が不可欠であるとともに、部分的に複製又は公衆送信することによって同一性保持権の侵害になる可能性があります。そのような種類の著作物であれば、一つの著作物の全部を複製又は公衆送信をしても著作権者等の利益を不当に害するとは言えない可能性があります。なお、この項でいう「複製又は公衆送信」は、授業に供する著作物を単体で利用する場合について述べたものであり、授業風景や解説の中継映像などの動画の中で影像の一部として、又は背景的にこれらの著作物が利用されている場合(専ら著作物等自体を提供するような行為でない場合)は、著作物の種類に関わらず、著作物の全部が複製又は公衆送信されていても著作権者等の利益を不当に害する可能性は低いと考えられます。

〇厳密には「著作物の種類」という観点での区別ではありませんが、著作物の種類とも関連して著作物が提供されている状況や著作物を入手する環境によって、授業の目的で著作物の全部を複製することが、著作権者等の利益を不当に害することに該当する場合もあれば、そうでない場合もあります。以下はそのような観点から考え方を説明します。

・一つのコンテンツの中に複数の著作物が含まれている場合、コンテンツと他の著作物の相互関係によって著作権者等の利益を不当に害するかどうかの分量が異なることもあり得ます。例えば、放送から録画した映画や番組であれば、通常、全部を複製することは著作権者等の利益を不当に害する可能性が高いので、そのうちの必要な一部分にとどめて複製することが考えられます。その一部分に音楽や言語の著作物等が素材として含まれていた場合、その一部分の利用が授業のために必要な範囲であれば、その素材としての著作物等については全部の複製をしていても著作権者等の利益を不当に害することとなる可能性は低いと考えられます。

・著作権者等の利益を不当に害するかしないかを判断する重要な観点は、複製や公衆送信によって現実に市販物の売れ行きが低下したり、将来における著作物の潜在的販路を阻害したりすることがあるか否かですので、利用者がその著作物を個別に入手(購入)できるかどうか、あるいはその利用許諾申請を著作権者等に、個別に又は包括的に行うことができるかどうかが一つのカギになります。相当程度に入手困難かつ、合理的な⼿段で利⽤許諾を得ることができない著作物であれば、この規定の適用を受けて複製できる著作物の分量については全部も可能となるものがあると考えられますので、個別に判断することが必要と考えられます。

<全部を複製又は公衆送信しても著作権者等の利益を不当に害することとはならない可能性が高い例(授業に必要と認められる限度内であることを充足することが前提)>

●採択された教科書中の著作物の利用

※「個々の作品(文章作品や写真・イラスト等)の他に、発行した出版社等による著作物も含まれる。

※採択された教科書の代替として使用される学習者用デジタル教科書の契約内の利用についても同様。

●俳句、短歌、詩等の短文の言語の著作物

●新聞に掲載された記事等の言語の著作物

●写真、絵画(イラスト、版画等を含む。)、彫刻その他の美術の著作物、及び地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

 

■著作物の用途■

〇その著作物がどのような目的で作成され、市場でどのように供給されている

かによって、著作権者等の利益を不当に害することもあります。

例えば、児童・生徒が全員購入し、利用する目的で販売されている問題集やドリルを、児童・生徒の購入の有無にかかわらず、教師が、授業の過程で児童・生徒に解かせるために複製又は公衆送信するようなことは、当該著作物の本来の流通を阻害することになります。

ただし、例えば、児童生徒がドリルを忘れてしまった際に、ドリルの一部をコピーして渡すというような行為は、許容されるでしょう。

また、採択していない教科書(採択外教科書)の中の著作物については、採択した教科書(採択教科書)と異なり、原則として、授業に必要な限度の範囲内で、通常の出版物の中の著作物と同様の複製・公衆送信が可能と考えられます。

例えば、1冊の採択外教科書の中の多くの著作物を複製・公衆送信する場合は、著作権者の許諾が必要です。

■複製の部数・公衆送信の受信者の数■

○複製部数や公衆送信の受信者の数が、授業を担当する教員等及び当該授業の履修者等の数を超えるような場合は、そもそも「授業のために必要と認められる限度」を超えており認められませんし、併せて著作権者等の利益を不当に害する可能性が高いと考えられます。ただし、授業参観や研究授業の参観者に、授業で配布する著作物と同一の著作物を配布することは、「必要と認められる限度」と考えられます(⑦「必要と認められる限度」を参照)。

■複製・公衆送信・伝達の態様■

〇「複製の態様」に照らして著作権者等の利益を不当に害する場合の例としては、仮に全部の複製が認められるようなケースであっても、市販のような様態で製本し、複製することが考えられます。

デジタルであるかアナログであるかは問いませんが、その複製物を単体で(教材の用途を超えて)他の利用に供することができるような場合には、著作権者等の利益を不当に害することとなる可能性が高いと考えられます。

○「公衆送信の態様」に照らして著作権者等の利益を不当に害する場合の例としては、学校、教育委員会のホームページや動画共有サービスなど、誰でもアクセスが可能なオープンなネットワーク環境(学校に在籍する教員や児童生徒以外の不特定者が、誰でも受信できるような態様)で公衆送信することが考えられます(この場合は、同時に「必要と認められる限度」の要件も充足しません)。著作権者等の利益を不当に害することがないように公衆送信を行うには、たとえば、授業支援クラウドなどで、IDとパスワードを児童・生徒全員に設定し、限定された児童・生徒のみに公衆送信したり、コンテンツの非公開URLを履修者である児童・生徒のみに伝えたりするなどの方法があります。いずれにせよ、授業の過程で利用することを実質的にコントロールできているかどうかが重要です。

〇「伝達の態様」に照らして著作権者等の利益を不当に害する場合の例としては、この規定が授業の過程での利用に係る制限規定であることを考慮すると、授業の履修者以外の者にも見せるような態様で伝達することが考えられます。ただし、オンライン授業で保護者が機器の操作を補助することが必要な場合は、保護者は授業を支援するものと考えられ、著作権者等の利益を不当に害さないと考えられます。(⑥「授業を受ける者」を参照)

<不当に害する可能性が高いため、補償金の範囲では利用できない例>

●同一の教員等が、ある授業の中で、同一の書籍の中から1回目の授業で第1章、2回目で第2章を複製して配布するというように、同じ著作物や出版物の異なる部分を利用することで、結果としてその授業での利用量が当該著作物や出版物の多くの部分を使い、市販物の売れ行きを低下させるようなこと。

・著作物の例

<教科指導>教師用指導書、参考書、資料集、問題集、ドリル、ワークブック、テスト・ぺーパー、授業で教材として使われる楽譜、副読本、教育用映像ソフト

ただし、履修者全員が購入していることが確認されている場合であって、問題の解説等を行う目的で付加的に複製等を行うことは許容される余地がある。

<特別活動等>演劇の脚本、読書会用の短編小説、部活動で使われる楽譜

●美術、写真など、「不当に害しない可能性が高いと思われる例」において全部の利用が認められている著作物を市販の商品の売上に影響を与えるような品質で提供すること

●市販あるいは長期間保存できるように製本して配布すること

 

-2 高等教育

 

基本的な考え方

著作物の種類■

○著作物の種類によって、そもそもこの規定を適用することが適切ではないものがあります。例えばコンピュータのプログラミングの授業を行うために市販のアプリケーションソフトを複製して学生に提供したり公衆送信したりすることは、プログラムの著作物という種類に照らして著作権者の利益を不当に害する可能性が高いと考えられます。もっとも、ソースコードを書面にプリントアウトしたりその書面を公衆送信したりするような場合であれば、アプリケーションソフトの市場での流通を阻害するとは言えないと考えられます。

〇この規定により著作権者等の許諾を得ずに著作物を複製又は公衆送信する場合、複製又は公衆送信できる分量については、「授業において必要と認められる限度において」と定められています。市場での流通を阻害するような利用が著作権者等の利益を不当に害することとなりかねないことを考えると、著作物の種類によっては著作物の全体が利用できるのか、部分の利用に限られるのかが異なることもあります。このことについてどの著作物の種類が全部の利用ができるか、あるいはそうでないかを網羅的・限定的に示すことは困難ですが、例を挙げながらその考え方を示します。

まず、短文の言語の著作物などの場合、表現形式によっては一つの著作物の全体の利用をせざるを得ないことや、また、主に鑑賞を目的とした絵画や写真の著作物の場合は部分的に複製又は公衆送信することによって同一性保持権の侵害になるとの考え方もあります。そのような種類の著作物であれば、一つの著作物の全部を複製又は公衆送信をしても著作権者等の利益を不当に害するとは言えない可能性があります。

また、論文の著作物の場合、小部分の利用にとどまる場合ばかりではなく、全文を通読する必要がある授業もあり、その論文が市場に流通していないような場合には、一つの論文の全部を複製又は公衆送信しても、著作権者等の利益を不当に害することとなる可能性は低いと考えられます。

なお、この項でいう「複製又は公衆送信」は、授業に供する著作物を単体で利用する場合について述べたものであり、授業風景や解説の中継映像や動画の中で影像の一部として、又は背景的にこれらの著作物が利用されている場合(専ら著作物等自体を提供するような行為にならない場合)は、著作物の種類に関わらず、著作物の全部が複製又は公衆送信されていても著作権者等の利益を不当に害する可能性は低いと考えられます。

〇厳密には「著作物の種類」という観点での区別ではありませんが、著作物の種類とも関連して著作物が提供されている状況や著作物を入手する環境によって、授業の目的で著作物の全部を複製することが、著作権者等の利益を不当に害することになったり、そうでなかったりすることもあります。以下はそのような観点から考え方を説明します。

・一つのコンテンツの中に複数の著作物が含まれている場合、コンテンツと著作物の相互関係によって著作権者等の利益を不当に害するかどうかの分量が異なることもあり得ます。例えば、放送から録画した映画や番組であれば、通常、全部を複製することは著作権者等の利益を不当に害する可能性が高いので、そのうちの必要な一部分にとどめて複製することが考えられます。その一部分に音楽や言語の著作物等が素材として含まれていた場合、その一部分の利用が授業のために必要な範囲(専ら当該素材としての著作物等自体を提供するような行為にならない場合)であれば、その素材としての著作物等については全部の複製をしていても著作権者等の利益を不当に害することとなる可能性は低いと考えられます。

・専門性の高い論文集などで編集物として流通しているものの中に素材として掲載されている論文等の著作物を授業で利用する場合、元々の編集物が想定していない読者対象における利用であれば、その素材の論文等の全部の複製等をしても著作権者等の利益を不当に害することとなる可能性は低いと考えられる場合もあります。

ただ、編集物が想定している読者対象の範囲はその編集物によって異なり、学術分野が学際化していることもあって明確に区分することは難しいため、専門性の高さゆえに発行部数が少ない専門出版物の場合には、それに掲載された論文等の全部の複製等をすることは特に配慮が必要です。

また、定期刊行物に掲載された論文等の場合、想定している読者対象の需要を満たすことを考えると、発行後相当期間を経過していないものについては、その素材の論文等の全部の複製等をすることは著作権者等の利益を不当に害することとなる可能性は高くなると考えられます(ただし、編集物が当初想定している読者のニーズを満たすための期間(賞味期間のようなもの)は、その分野や内容によって一様ではないので、「発行後相当期間が経過した」と言っても、例えば図書館実務としてのコピーサービスで行われているように「次号が発行されれば過去のものに掲載された個々の論文等の複製等について許諾を得る必要がない」と単純に考えるのは適切ではありません。専門雑誌などの場合は、最新号が発行されてからも、過去のものも並行して入手可能なように流通させているものがあります。店頭に並んでいるからということだけで、出版社が想定している読者対象の需要が残っているかどうかを教員や学生に判断できるかは難しい点もありますが、結局のところ、担当教員が複製等をして学生に提供することにより、市場での流通に影響を与える可能性があるかどうかを、学生にとっての入手の容易性も考慮しながら個別に判断せざるを得ません。)。

以上のことを踏まえると、論文等を全部複製することについては、当面は、①当該論文が市場に流通していないこと、②論文集などの編集物に収録されている他の論文が授業とは関係ないものであること、③定期刊行物に掲載された論文等の場合、発行後相当期間を経過していることといった基準で著作権者等の利益を不当に害しない範囲を判断することが適当と考えられます。

・著作権者等の利益を不当に害しないようにするためには、まず教育機関における著作権に関する意識の啓発が必要ですが、それと同時に教育関係者がその著作物を一般的な手段で入手することができるかどうかが一つのカギになります。容易に入手できる場合には、それを全部複製することは著作権者等の利益を不当に害する可能性が高くなり、逆に入手困難な場合には、その可能性が低くなることになります。この場合、入手の困難性の判断基準としては、従来であればその著作物(出版物)が絶版となっているかどうかが一つの分かりやすい目安とされていましたが、電子書籍の普及によって絶版になる可能性は低くなり、サブスクリプションや電子図書館その他の様々なサービスで利用可能になっている場合があります。ICTを活用した教育活動の展開や学生自身の学修の充実のためには、そのような選択肢が拡大することは望ましいといえます。もしコンテンツの新たな提供方法の開発により、学生自身の費用負担も少なく容易に論文全部の入手ができるような環境ができれば、この規定を活用して論文を複製する際に全部利用も可能となるような基準は限定的に考えることができるかもしれませんが、現時点では個別に判断せざるを得ないと考えられます。

(全部を複製又は公衆送信しても著作権者等の利益を不当に害することとはならない可能性が高い例)

●俳句、短歌、詩等の独立した短文の言語の著作物

●新聞に掲載された記事等の言語の著作物

●雑誌等の定期刊行物で発行後相当期間を経過したものに掲載された記事等の言語の著作物

●上記に関わらず、論文の著作物であって専門書、論文集等に掲載されたものについては、授業の目的に照らして全文が必要と認められる場合であって、出版物全体に占める当該論文等の分量、当該出版物の流通の状況や当初の出版時に想定された読者対象かどうか、その出版物が出版後相当期間を経過しているか、入手が容易であるかなどを勘案して、個々の履修者が購入することが必ずしも合理的ではない場合

●主に鑑賞を目的とする写真、絵画(イラスト、版画等を含む。)、彫刻その他の美術の著作物、及び地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

●マークなどにより、事前の個別許諾手続きを不要とする著作権者の意思表示(条件が明示されているものを含む。)がなされた上で、又はそのような取り扱いがルール化された環境で提供されている著作物

著作物の用途■

〇その著作物がどのような目的で作成され、市場でどのように供給されているかによって、著作権者等の利益を不当に害することもあります。

例えば、学部の授業の内容がある資格試験と関連がある場合に、主として当該資格試験を受験しようとする者に向けて販売されている問題集を、授業の過程で演習問題として学生に解かせるために複製又は公衆送信するようなことは、当該著作物の本来の流通を阻害することになります。

○授業の履修に当たり、学生が手許に持っている教科書に掲載されているグラフ等の図版を授業の過程でスクリーンに投影して説明するために複製するような場合であれば、本来教科書の複製は、特にそれを学生に提供する場合には、授業の過程といっても著作権者等の利益を不当に害する可能性が高いと考える必要がありますが、これはその教科書に掲載されている個々の著作物をスクリーンに投影するために複製する中間的な行為に過ぎないので、教科書からの複製であっても不当に害することとはならないと考えられます。

複製の部数・公衆送信の受信者の数■

○複製部数や公衆送信の受信者の数が、授業を担当する教員等及び当該授業の履修者等の数を超えるような場合は、そもそも「授業のために必要と認められる限度」を超えており認められませんし、併せて著作権者等の利益を不当に害する可能性が高いと考えられます。なお、授業の性質によって指導スタイルは多様であり、履修登録者数も時期によって増減があるため、人数の基準を数値で示すことは困難ですが、一般的には、少人数の規模でも多人数の規模でも、その授業のクラスサイズの単位を超えているかどうかで判断されます。

○番組を録画したものの一部を授業の中で再生して視聴させる場合、一般的には、教員のメインの機械から大型ディスプレイに投影したり、個々の学生が開いているPCのモニターに投影したりすれば足りるでしょう。したがって、学生にその録画物によって何らかの操作をさせたりするような特別な学修形態でない限り、学生の人数分の複製物を作成して配付するようなことは著作権者等の利益を不当に害する可能性が高いと考えられます。

複製・公衆送信・伝達の態様■

〇「複製の態様」に照らして著作権者等の利益を不当に害する場合の例としては、そのために仮に全部の複製が認められるようなケースであっても、市販あるいは長期間保存できるように製本するような態様で複製することが考えられます。

デジタルであるかアナログであるかは問いませんが、その複製物を単体で(教材の用途を越えて)他の利用に供することができるような場合には、著作権者等の利益を不当に害することとなる可能性が高いと考えられます。

〇「公衆送信の態様」に照らして著作権者等の利益を不当に害する場合の例としては、LMSで学生の履修状況を管理するのではなく、ホームページなどオープンなネットワーク環境で履修者以外にも誰でも受信できるような態様で公衆送信することが考えられます。アクセスするためのIDとパスワードで管理することも一つの方法ですが、授業の過程で利用することを実質的にコントロールできているかどうかが重要です。

〇「伝達の態様」に照らして著作権者等の利益を不当に害する場合の例としては、この規定が授業の過程での利用に係る制限規定であることを考慮すると、授業の履修者以外の者にも見せるような態様で伝達することが考えられます。

○なお、教員が作成する教材(プレゼンテーションソフトで作成した資料など)の文字列や画像からハイパーリンクを張って、特定機関のホームページ等に遷移させることは著作物の複製でも公衆送信でもありません。したがって授業の中で動画を視聴させるような場合、動画ファイルを保存したりそこからコピーして学生に配付しようとしたりすると、「必要と認められる限度なのか」、「著作権者等の利益を不当に害しないのか」を判断する必要がありますが、リンクを張るだけの場合であれば、それは無許諾・無償で行うことができます。

<著作権者の利益を不当に害する可能性が高い例>

●文書作成ソフト、表計算ソフト、PDF編集ソフトなどのアプリケーションソフトを授業の中で使用するために複製すること

●授業の中ではそのものを扱わないが、学生が読んでおいた方が参考になると思われる文献を全部複製して提供すること

●授業を担当する教員等及び当該授業の履修者等の合計数を明らかに超える数を対象として複製や公衆送信を行うこと

●授業の中で回ごとに同じ著作物の異なる部分を利用することで、結果としてその授業での利用量が小部分ではなくなること

●授業を行う上で、教員等や履修者等が通常購入し、提供の契約をし、又は貸与を受けて利用する教科書や、一人一人が演習のために直接記入する問題集等の資料(教員等が履修者等に対して購入を指示したものを含む。)に掲載された著作物について、それらが掲載されている資料の購入等の代替となるような態様で複製や公衆送信を行うこと(ただし、履修者全員が購入していることが確認されている場合であって、問題の解説等を行う目的で付加的に複製等を行うことは許容される余地がある。)

●美術、写真等であって、必要と認められる範囲で全部の利用が認められている著作物を、市販の商品の売上に影響を与えるような品質で複製したり製本したりして提供すること

●授業のために利用するかどうか明確でないまま素材集を作成するような目的で、組織的に著作物をサーバへストック(データベース化)すること

●MOOCs(大規模公開オンライン講義、誰でもアクセスできる)のような態様で、著作物を用いた教材を公衆送信すること

(高等教育専門WGにおいて意見の対立がある部分、引き続き検討する事項)

「教育機関で複製等が行われれば売り上げに影響することは立法当時から自明であり、売り上げが減るから直ちにそれが不当だと解釈するのは適当ではない。コンテンツの付加価値をより高め、権利処理コストも考慮した流通モデル(利用しやすいライセンス環境)も想定したうえで、教育機関による複製がなお「不当に」利益を害するかどうかを判断する視点も必要」との考え方に対し、「それは将来の市場を見越してビジネスモデルの変更を強いることになるため、既存の市場と衝突すればそれで不当と考えるべき。新たなビジネスへの転換のインセンティブ(投資)のためにも、権利が働くと考えるべき」との考え方がある。

コースパック(定義から整理し直したうえで、問題点を検討する。)

著作物の本来の用途から外れて想定外の人が所有している複製物(公表された著作物)を、授業の過程で複製して利用するようなことに係る問題点など、必ずしも35条の解釈の問題ではない課題について、運用指針にどう反映するか(教育現場がどのようなことに注意すればよいかの参考になるよう、どう提示すればよいか)。

典型例の示し方

⑨-3 その他

  • 著作物レンタルや、デジタルサービス(デジタル教材、データベース、ワークシート、フォトサービス等)、コンテンツ配信契約、有料放送、有料音楽配信等のうち、教育利用であるか否かに関わらず複製、公衆送信して利用することが禁止されていることを定めている契約を、それぞれのサービスを提供する者との間締結した場合において、当該契約により入手した著作物を利用すること。
  • コピーやアクセスの制限をかけられた著作物の複製又は公衆送信利用。

例)Blu-ray Disc/DVDなどの映画の著作物等

上記2項目については、本フォーラム内に著作権関係有識者専門ワーキング・グループを設置し、検討している。

※本運用指針記載の例で、すべてを網羅しているわけではありません。本運用指針の見直しにあわせて今後、学校等における典型的な利用例を追加していきます。

 

2.学校等における典型的な利用例

授業での利用の例

学校など教育機関の教員等は、授業の中で他人の著作物を複製し、履修者等に配付することなどについては、「その必要と認められる限度」において、著作権者の許諾を得ることなく、無償で行うことができます。また、他人の著作物を使用して作成した教材を、履修者等の端末に送信したり、オンデマンド型の遠隔授業で使用したりすることもできます。この場合、著作権者の許諾を得ることは不要ですが、学校などの設置者が著作権者に補償金を支払うことが必要です。

ただし、いずれの場合でも、「当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害する」場合には著作権者の許諾が必要です。

以下の例で示した教科名、授業のテーマ、場面は参考例です。いずれの場合も、「引用」(著作権法第32条第1項)に該当する場合などは許諾不要、無償で利用できます。また、慣行がある場合は著作者名など「出所の明示」が必要です。

初等中等教育

A)許諾不要、無償で著作物を利用できると考えられる例

■ 複 製 ■

<教室での授業>

1.教科書※1に掲載されているエッセイの全部を授業で教員が板書する。

2.単行本に掲載されているエッセイの小部分を授業で教員が板書する。

3.新聞に掲載されている写真と記事をコピーした授業用のプレゼンテーション資料を作成する。

4.3.で作成した資料を、事務補助員に依頼し印刷する。

5.3.で作成した資料を、授業参観で生徒と参観した保護者に配布するために印刷する。

6.テレビの報道番組録画し、その一部を授業で視聴する。

 

<教室外での授業>

7.旅行ガイドブックの一部を修学旅行中の児童生徒に配布するために宿泊施設でコピーする。

 

<教員研修>

8.新聞に掲載されている写真と記事をコピーした研修資料を指導主事が印刷して、教育センター主催の研修で配布する。

 

※1 教科書は利用している地域や学校(学科・コース別の場合もあり)で採択され児童・生徒全員が所有している教科書を示します。採択されていない教科書は、一般の書籍等と同じ扱いになります。

 

■ 公衆送信 ■

<リアルタイム遠隔合同授業>

1.板書したエッセイの小部分を、インターネットを使った2校の遠隔合同授業で同時中継(送信)し、大型画面に表示する。

2.1.において配布する資料を授業中に送信する。

3.対面授業の様子を、インターネットを使って生徒の自宅に同時送信する。

4.修学旅行の事前学習として、修学旅行先の現地の学校と、新聞記事や写真、テレビ番組の映像等を用いながらネットミーティングシステムでリアルタイムの遠隔交流授業を行う。

 

B)許諾不要で利用できるが、補償金の支払いが必要だと考えられる例

■ 公衆送信 ■

<公衆送信(教室内学習)>

1.教科書※1に掲載されているスキット(寸劇)を、教師が肉声で録音し、児童・生徒のみがアクセス可能なクラウド・サーバ(以下同じ)にアップロードする。

2.教科書等の出版物から図版や文章を抜き出してプレゼンテーションソフトにまとめ、対面での授業中にクラウド・サーバを通じて児童のタブレット端末に送信する

3.全国各地での取り組みを紹介した複数の新聞記事をプレゼンテーションソフトにまとめてクラウド・サーバにアップロードする。

4 授業で利用する教科書や新聞記事などの著作物を用いた教材を学習できるようにクラウド・サーバにアップロードする。

<オンデマンド型公衆送信(教室外学習)※2

5.反転授業のための予習(事前学習)の資料として、教科書の著作物や絵画、写真などをクラウド・サーバにアップロードする。

6.修学旅行で訪ねる文化施設についての説明の必要な部分をタブレットPCから参照できるようにするため、クラウド・サーバにアップロードする。

7.教員が教科書を使った授業動画を収録し、クラスの児童生徒のみがアクセスして視聴できるような方式で配信する

<リアルタイム・スタジオ型公衆送信(教室外学習)※3

8.幼稚園や保育所で、普段対面で行っている絵本の読みきかせを、臨時休園中に、同じ教員と幼児間の在宅オンライン授業として行う。

9.児童生徒がいない場の教員が、自宅等にいる児童生徒とネットミーティングシステムを使い、写真や教科書等の文章、新聞記事やウェブページ等を使ったオンライン授業を行う。

10.DVDに録画したテレビ番組を授業に必要な範囲で、教員のパソコンで再生し、生徒のタブレット端末へストリーミング配信する。

11.在宅の幼児に音楽に合わせて踊る踊りを教えるためにインターネットを用いて楽曲の全部をストリーミング配信する。

※2 オンデマンド型とは、学習者の注文(要求)に応じて学習資源を提供する方法。

※3 リアルタイム・スタジオ型とは、教員の面前に児童生徒がいない場所から児童生徒の自宅などに学習資源(映像・音声等)をリアルタイムで配信するオンライン授業の態様。

 

C)著作権者の許諾が必要だと考えられる例

(必要と認められる限度を超える、著作権者の利益を不当に害する等)

■ 複 製 ■

1.教員が日本各地の祭りを撮影した写真集の中から写真を数十枚選んで紙にカラーコピーして簡易製本し、社会科の授業で複数年にわたって使える教材にする。

2.教員が算数のドリルを児童には購入させず、学校や教員が持っている算数ドリルの中から児童に配付するために問題を紙にコピーする。

3.小説の一部を授業の都度、生徒に配付するために紙にコピーした結果、学期末には小説の多くの部分をコピーする。

4.授業に必要な範囲を超えて映像や音楽の全編をコンピュータに保存する。

■ 公衆送信 ■

1.教員が同一の画集の中から多くの作品を選んでスキャンして電子ファイルにしてクラウド・サーバにアップロードし、美術の授業で生徒が個々に配備されたタブレットでダウンロードする。

2.教員が漢字ドリルを児童には購入させず、学校や教員が持っている漢字ドリルをスキャンして、児童に宿題としてメールで送信する。

3.教員が授業と直接関係ないものも含めて多数の小説をアップロードする。

4.教員が出版物の一部を、授業の都度、スキャンして生徒に予習の教材として複数回、電子ファイルでメール送信し、その結果、その出版物の多くの部分を送信する

5. 絵本の読みきかせ動画を、クラウド・サーバにアップロードし、幼児児童生徒が自宅からいつでも視聴できるようにする。

6.様々な分野に関するTV番組を授業で自由に使えるようにするため、継続的に録画し、クラウド・サーバにアップロードして蓄積し、ライブラリ化しておく。

7.授業に必要な範囲を超えて、映像や音楽の全編を学校の教員や児童生徒がいつでもダウンロード視聴できるようにしておく。

8.教師が、紙の教科書の全ページ又は大部分をスキャンし、PDF版デジタル教科書を作成して児童生徒に配信する。

9.学校のホームページ等に、パスワードをかけずに、教科書等を解説する授業映像を教師がアップロードし、児童生徒以外の誰でも見られる状態にしておく。

以下、高等教育、社会教育施設及び授業以外での利用の典型例について、今後追記予定。

参考資料

1 授業の過程における利用行為と授業目的公衆送信補償金制度(著作権法第35条)上の取扱いについて(文化庁作成)

2 著作権法における権利制限の例

著作権法には、私的な使用目的での複製など、著作権侵害にはあたらないとする事例も定められています(=著作権者の権利が制限されます)。ただ、そのような事例においても、それぞれの条文により適用の要件が定められており、著作権者の利益を不当に害する場合は認められなかったり、無許諾で利用できても補償金の支払いが必要だったりする場合があります

私的使用のための複製

(第30条)

・個人的又は家庭内もしくは家庭に準ずる閉鎖的な範囲で使用する場合に適用されます。

・一般的に業務上の利用については私的使用に含まれないと考えられます。

図書館等における複製等

(第31条)

・公共図書館の他に学校教育法上の大学、高等専門学校、特別法上の教育機関等政令で定める機関の図書館等が行う複製サービス等に適用されます。

・小、中、高の図書室は複製が認められる「図書館等」には含まれません。

引用

(第32条)

・教員等又は履修者等の論文、レポート等の作成に当たって、他人の著作物を利用する場合等に適用されます。(32条1項)

・明瞭区分性、主従関係等の要件が必要とされています(パロディー事件<S55.3.28最高裁判決>)。また近時、引用の要件である「公正な慣行」や「引用の目的上正当な範囲」に該当するかどうかを様々な事情を総合的に考慮して判断するという考えに基づく判例もあります。(絵画鑑定書事件<H22.10.31知財高裁判決>)

・論文、レポート等の作成以外にも教材の作成や授業のやり方によっては引用の規定が適用される場合があります。

・周知目的の公的機関名義の広報資料、調査統計資料、報告書等を説明の材料として刊行物に転載する場合に適用があります。(第32条2項)

試験問題としての複製等

(第36条)

・入試問題、定期試験等の問題を作成し、利用する場合に適用があります。(第36条1項)

・紙媒体を用いた試験だけでなく、インターネット(公衆送信)を用いた試験も対象となります。

教科用図書代替教材への掲載等

(第33条2)

・教科用図書に掲載された著作物は、学校教育の必要上で認められる限度において、デジタル教科書に掲載することができます。

・掲載にあたっては、教科用図書の発行者への通知と、著作権者への補償金の支払いが必要です。

視覚障害者等のための複製等

(第37条)

・公表された著作物を点字データ化し、その点字データを公衆送信することができます。

・公表された著作物を点字データ以外の視覚障害者等が利用するために必要な方式(録音図書、拡大図書、デイジー図書など)で複製し、公衆送信することができます(主体等について一定の要件があります)。

(※)聴覚障害者等に関しては、別途、第37条の2で規定

営利を目的としない上演等

(第38条)

・学校の文化祭での演奏会等、非営利で聴衆・観衆から料金を取らず、出演者に報酬が支払われない等の条件を満たせば利用できます。

・公衆送信は含まれません。

公開の美術の著作物等の利用

(第46条)

・彫刻など美術の著作物で、屋外に恒常的に設置されているものはパンフレットなどに利用できます。

・彫刻など著作物の複製を作るには、別に許諾を取る必要があります。

複製権の制限により作成された複製物の譲渡

(第47条の7)

・著作権法35条等の複製権の権利制限規定によって無許諾で作成された複製物は、著作権者の許諾を得ることなく公衆に提供することができます。
目的外使用

(第49条)

・権利制限規定によって作成された複製物を、それぞれの規定で認められた作成の目的とは別の目的で配布したり、公衆に提示したりするには、別に許諾を取る必要があります。

 

3 関連法令、根拠法令等

(1)「非営利の教育機関」

〇学校教育法

第1条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

第124条 第1条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次の各号に該当する組織的な教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く。)は、専修学校とする。

第134条 第1条に掲げるもの以外のもので、学校教育に類する教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び第124条に規定する専修学校の教育を行うものを除く。)は、各種学校とする。

 

<教育センター、図書館、博物館、公民館等 関連>

〇地方教育行政の組織及び運営に関する法律

第30条 地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置するほか、条例で、教育に関する専門的、技術的事項の研究又は教育関係職員の研修、保健若しくは福利厚生に関する施設その他の必要な教育機関を設置することができる。

 

<教育センターでの研修 関連>

〇教育公務員特例法

第21条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。

2 教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。

第22条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。

 

<株式会社立学校 関連>

〇構造改革特別区域法

第12条11 学校設置会社に関する次の表の第一欄に掲げる法律の適用については、同表の第2欄に掲げる規定中同表の第3欄に掲げる字句は、それぞれ同表の第4欄に掲げる字句とする。

著作権法(昭和45年法律第48号) 第35条第1項 設置されているものを除く。 設置されているものを除き、学校設置会社(構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第2項に規定する学校設置会社をいう。第38条第1項において同じ。)の設置する学校を含む。
第38条第1項 又は観衆 若しくは観衆
受けない場合 受けない場合又は学校設置会社の設置する学校において聴衆若しくは観衆から料金を受けずにその教育若しくは研究を行う活動に利用する場合

 

(2)初等中等教育での「授業」

小中高共通:特別活動

  学校教育法施行規則、小・中・高校の学習指導要領

学級活動、クラブ活動、児童・生徒会活動、学校行事、その他

 

小学校(義務教育学校の前期課程)

学校教育法施行規則(第50条、51条、52条等)

国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育、道徳、外国語、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動、自立活動(特別支援学校)、宗教(道徳の代替)など

 

中学校(義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程)

学校教育法施行規則(第72条、73条、79条)

国語、社会、数学、理科、音楽、外国語、美術、保健体育、技術・家庭 道徳、総合的な学習の時間、特別活動、自立活動(特別支援学校)、宗教(道徳の代替)など

 

高等学校(中等教育学校の後期課程)

学校教育法施行規則(第84条等)

〇普通教科 国語、地理歴史、公民、数学、理科、外国語、保健体育、芸術、家庭、情報、学校設定教科

〇専門教科 農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉、外国語、理数、体育、音楽、美術、学校設定教科

○教科以外 総合的な探究の時間、特別活動、自立活動、宗教(道徳の代替)

 

〇学習指導要領 特別活動(年間35時間程度)

<小学校>

学級活動、児童会活動、クラブ活動、学校行事

<中学校>

学級活動、生徒会活動、学校行事

<高等学校>

ホームルーム活動、生徒会活動、学校行事

 

教育課程外活動に関して

<中学校、高校の部活動 関連>

〇中学校学習指導要領 第1章総則(平成29年告示)

第5 学校運営上の留意事項

1 教育課程の改善と学校評価、教育課程外の活動との連携等

ウ 教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に、生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、学校や地域の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い、持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。

 

〇学校教育法施行規則

第78条の2 部活動指導員は、中学校におけるスポーツ、文化、科学等に関する教育活動(中学校の教育課程として行われるものを除く。)に係る技術的な指導に従事する。

 

〇運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(スポーツ庁:平成30年3月)

〇文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(文化庁:平成30年3月)

 

<その他>

公開(研究)授業

〇平成29年告示 小学校学習指導要領 第1章総則 第3節 教育課程の実施と学習評価

1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善

(1) 第1の3の (1) から (3) までに示すことが偏りなく実現されるよう、単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら、児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと。

 

授業検討会

〇平成29年告示 小学校学習指導要領 第1章総則 第3節 教育課程の実施と学習評価

1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善

(1) 第1の3の (1) から (3) までに示すことが偏りなく実現されるよう、単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら、児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと。

 

地域住民や保護者等への授業公開(授業参観)

〇学校教育法

第43条 小学校は、当該小学校に関する保護者及び地域住民その他の関係者の理解を深めるとともに、これらの者との連携及び協力の推進に資するため、当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況に関する情報を積極的に提供するものとする。

〇学校教育法施行規則

第67条 小学校は、前条第1項の規定による評価の結果を踏まえた当該小学校の児童の保護者その他の当該小学校の関係者(当該小学校の職員を除く。)による評価を行い、その結果を公表するよう努めるものとする。

※これらの規定は、幼稚園(第28条)、中学校(第49条)、高等学校(第62条)、中等教育学校(第70条)、特別支援学校(第82条)、専修学校(第133条)及び各種学校(第134条第2項)に、それぞれ準用する。

 

(3)高等教育での「授業」

〇学校教育法

第83条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。

〇大学設置基準

第19条 大学は、当該大学、学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする。

第31条

2 大学は、大学の定めるところにより、当該大学の学生以外の者で学校教育法第105条に規定する特別の課程を履修する者(以下この条において「特別の課程履修生」という。)に対し、単位を与えることができる。

 

〇学校教育法

第105条 大学は、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の学生以外の者を対象とした特別の課程を編成し、これを修了した者に対し、修了の事実を証する証明書を交付することができる。

注:履修証明プログラムは「特別の課程」である。

 

〇平成3年文部省告示第68号(大学設置基準第29条第1項の規定による大学が単位を与えることのできる学修)=令和元年8月に一部改正

1 大学の専攻科又は学校教育法(昭和22年法律第26号)第105条の規定により大学が編成する特別の課程における学修

6 教育職員免許法(昭和24年法律第147号)別表第3備考第6号の規定により文部科学大臣の認定を受けて大学、短期大学等が行う講習又は公開講座における学修で、大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの

7 社会教育法(昭和24年法律第207号)第9条の5の規定により文部科学大臣の委嘱を受けて大学、短期大学その他の教育機関が行う社会教育主事の講習における学修で、大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの

8 図書館法(昭和25年法律第118号)第6条の規定により文部科学大臣の委嘱を受けて大学又は短期大学が行う司書及び司書補の講習における学修で、大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの

9 学校図書館法(昭和28年法律第185号)第5条第3項の規定により文部科学大臣の委嘱を受けて大学又は短期大学が行う司書教諭の講習における学修で、大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの

 

<FDについての根拠>

〇大学設置基準

第25条の3 大学は、当該大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする。

 

<SDについての根拠>

〇大学設置基準

第42条の3 大学は、当該大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、その職員に必要な知識及び技能を習得させ、並びにその能力及び資質を向上させるための研修(第25条の3に規定する研修に該当するものを除く。)の機会を設けることその他必要な取組を行うものとする。

 

<大学が行う公開講座についての根拠>

〇学校教育法

第107条 大学においては、公開講座の施設を設けることができる。

2 公開講座に関し必要な事項は、文部科学大臣が、これを定める。

〇国立大学法人法

第22条 国立大学法人は、次の業務を行う。

4 公開講座の開設その他の学生以外の者に対する学習の機会を提供すること。

 

<専修学校>

  学校教育法

    第125条 専修学校には、高等課程、専門課程又は一般課程を置く。

2 専修学校の高等課程においては、中学校若しくはこれに準ずる学校若しくは義務教育学校を卒業した者若しくは中等教育学校の前期課程を修了した者又は文部科学大臣の定めるところによりこれと同等以上の学力があると認められた者に対して、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて前条の教育を行うものとする。

3 専修学校の専門課程においては、高等学校若しくはこれに準ずる学校若しくは中等教育学校を卒業した者又は文部科学大臣の定めるところによりこれに準ずる学力があると認められた者に対して、高等学校における教育の基礎の上に、前条の教育を行うものとする。

4 専修学校の一般課程においては、高等課程又は専門課程の教育以外の前条の教育を行うものとする。

 

専修学校設置基準

第8条 専修学校の高等課程においては、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて専修学校の教育を施すにふさわしい授業科目を開設しなければならない。

2 専修学校の専門課程においては、高等学校における教育の基礎の上に、深く専門的な程度において専修学校の教育を施すにふさわしい授業科目を開設しなければならない。

3 前項の専門課程の授業科目の開設に当たつては、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮しなければならない。

4 専修学校の一般課程においては、その目的に応じて専修学校の教育を施すにふさわしい授業科目を開設しなければならない。

 

平成11年文部省告示第184号(専修学校設置基準第10条第1項及び第3項の規定による専修学校が授業科目の履修とみなすことができる学修)

1 省令第11条第1項の別に定める学修は、次に掲げる学修とする。

(略)

三 大学、短期大学、高等専門学校又は専修学校が付随事業として提供する公開講座その他の学修機会における学修、公民館その他の社会教育施設において開設する講座における学修その他これらに類する学修

(略)

 

(4)社会教育施設での「授業」

<公民館における「授業」>

〇社会教育法

第20条 公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

第22条 公民館は、第20条の目的達成のために、おおむね、左の事業を行う。但し、この法律及び他の法令によつて禁じられたものは、この限りでない。

1 定期講座を開設すること。

2 討論会、講習会、講演会、実習会、展示会等を開催すること。

3 図書、記録、模型、資料等を備え、その利用を図ること。

4 体育、レクリエーシヨン等に関する集会を開催すること。

5 各種の団体、機関等の連絡を図ること。

 

<図書館における「授業」>

〇図書館法

第3条 図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望に沿い、更に学校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるように留意し、おおむね次に掲げる事項の実施に努めなければならない。

(略)

6 読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を主催し、及びこれらの開催を奨励すること。

8 社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会を提供し、及びその提供を奨励すること。

(略)

 

<博物館における「授業」>

〇博物館法

第3条 博物館は、前条第一項に規定する目的を達成するため、おおむね次に掲げる事業を行う。

7 博物館資料に関する講演会、講習会、映写会、研究会等を主催し、及びその開催を援助すること。

9 社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会を提供し、及びその提供を奨励すること。

 

授業目的公衆送信補償金制度に関する参考資料

SARTRASのライセンスについて

SARTRASは、文化審議会著作権分科会報告書(平成29年度)が示す方向性の実現に向け、本協会がワンストップの窓口になるライセンス環境を整備すべく、著作権等管理事業法に基づき、著作権等管理事業者としての登録申請を行い、令和2年9月7日、登録を受けました。以後、検討したライセンスの内容について、著作権管理団体等と具体的な委託に関しての交渉を行い、ライセンス体制を整えるべく準備を進めております。

SARTRASが窓口になって行うライセンス(以下「SARTRASライセンス」という。)は、補償金制度を補完し、教育関係者が一般的な利用状況において、十分な基礎的利用環境を提供することを目的としています。言い換えれば、補償金制度とSARTRASライセンスとは一体となって、ICT活用教育を進める上で利用者にとって不安のない著作物等の利用環境の提供を目指している、ということになります。

もちろん、多様な教育の様態において、個別の許諾が必要とされる場合もあると考えられるので、そのようなライセンス体制については、著作権管理団体による実現に協力することとなります。

現在SARTRASライセンスの許諾の対象とするものとして検討している具体的な内容は、以下に記載したものであり、これらの利用に対し、著作物等を公衆送信(送信可能化を含む。)し、受信装置を用いて伝達し、複製し、又は当該複製物を譲渡する利用(以下「複製・公衆送信利用等」という。)をワンストップで許諾できるようにすることが検討されています。

さらに、同報告書にある「権利制限の境界で「切れ目」なく著作物の利用が行える環境を整え、教育現場の著作物利用ニーズに応えていく」べく、可能な範囲からSARTRASライセンスに取り入れられるよう、検討が重ねられることとなっています。

許諾の対象となる著作物等

著作権者又は著作隣接権者の団体又は著作権等管理事業者から、本協会が教育機関等の利用について管理の委託又は再委託を受けた著作物等

許諾の対象となる利用の範囲

教育機関等において、以下の各項に規定される利用と著作物等の範囲において行われる教育に係る著作物等利用(以下「教育目的利用」という。)のうち、著作物等を公衆送信(送信可能化を含む。)し、受信装置を用いて伝達し、複製し、又は当該複製物を譲渡する以下の各号に定める利用(以下「複製・公衆送信利用等」という。)

  • 初等中等教育を対象とした許諾の対象となる利用

(ア)一の教育機関における教員(法第 35 条第1 項に定める「教育を担任する者」をいう。以下同じ。)間や一の設置者が設置する複数の教育機関間において、教員が授業の過程で利用することを目的として教材等の複製・公衆送信利用等をすること。ただし、一の設置者が設置する複数の教育機関間の複製・公衆送信利用等においては、小学校の教材等は小学校の教員間、中学校の教材等は中学校の教員間など、同じ種類の教育機関の教員間での利用に限る。なお、次に該当するものは除く。

a)当該教材等の複製数又は公衆送信の受信者数が、当該教材等を授業の過程で利用する教員等の数を超える複製・公衆送信利用等

b)設置者が作成した教材等の複製・公衆送信利用等

(イ)教育機関において、授業を受ける者(法第 35 条第1項に定める「授業を受ける者」をいい、以下「履修者等」という。)が当該授業の履修終了後も当該授業の過程において使用に供された教材を継続して利用できるよう、教員が当該教材の複製・公衆送信利用等をすること。ただし、当該教材等の複製数又は公衆送信の受信者数が、当該授業の履修者等の数を超える複製・公衆送信利用等は除く。また、継続して利用できる期間は、当該履修者等の当該教育機関への在学中であり、かつ受託者と当該設置者との間の複製・公衆送信利用等に係る利用許諾契約(以下、「利用許諾契約」という。)の有効期間内に限る。

(ウ)保護者会等在学中の履修者等の保護者向け資料として教育目的利用するために、教職員が当該資料の複製・公衆送信利用等をすること。 ただし、当該資料の複製数又は公衆送信の受信者数が、当該保護者会等に参加する資格を有する保護者の数を超える複製・公衆送信利用等は除く。また、複製・公衆送信利用等をする当該資料は、当該保護者会等の会議中に実際に検討又は参照する部分に限る。

(エ)教育機関等の教職員が、教職員会議等それぞれの組織内で実施される会議における教育目的利用のために当該会議で使用する資料の複製・公衆送信利用等をすること。ただし、当該資料の複製数又は公衆送信の受信者数が、当該教職員会議等に参加する資格を有する者の数を超える複製・公衆送信利用等は除く。また、複製・公衆送信利用等をする当該資料は、当該教職員会議等の会議中に実際に検討又は参照する部分に限る。

(オ)教職員研修(教育機関等の教職員以外の関係者等が対象に含まれているものを除く。)において教育目的利用するために、教職員が当該研修で使用する資料の複製・公衆送信利用等をすること。ただし、当該資料の複製数又は公衆送信の受信者数が、当該教職員研修に参加する資格を有する者及び講師の数を超える複製・公衆送信利用等は除く。また、複製・公衆送信利用等をする当該資料は、当該教職員研修の会議中に実際に検討又は参照する部分に限る。

  • 高等教育を対象とした許諾の対象となる利用

(ア)教育機関において、履修者等が当該授業の履修終了後も当該授業の過程において使用に供された教材を継続して利用できるよう、教員が当該教材の複製・公衆送信利用等をすること。ただし、当該教材等の複製数又は公衆送信の受信者数が、当該授業の履修者等の数を超える複製・公衆送信利用等は除く。また、継続して利用できる期間は、当該履修者等の当該教育機関への在学中であり、かつ利用許諾契約の有効期間内に限る。

(イ)教育機関等の教職員が、教職員会議等それぞれの組織内で実施される会議における教育目的利用のために当該会議で使用する資料の複製・公衆送信利用等をすること。ただし、当該資料の複製数又は公衆送信の受信者数が、当該教職員会議等に参加する資格を有する者の数を超える複製・公衆送信利用等は除く。また、複製・公衆送信利用等をする当該資料は、当該教職員会議等の会議中に実際に検討又は参照する部分に限る。

(ウ)教職員研修(FD、SDとして実施される、教育機関の教員その他の職員を対象としたセミナーや情報提供等を含む。教育機関等の教職員以外の関係者等が対象に含まれているものを除く。)において教育目的利用するために、教職員が当該研修で使用する資料の複製・公衆送信利用等をすること。ただし、当該資料の複製数又は公衆送信の受信者数が、当該教職員研修に参加する資格を有する者及び講師の数を超える複製・公衆送信利用等は除く。また、複製・公衆送信利用等をする当該資料は、当該教職員研修の会議中に実際に検討又は参照する部分に限る。

上の①、②の利用の範囲は、教育機関等における内部利用に限る。なお、その利用に関しては、専ら教育機関設置者又は教育機関向けに販売等されている著作物等や履修者等各自が購入するドリル、ワークブック等の利用、販売されている著作物等の購入の代替となる分量の利用、組織的に素材としての著作物等をサーバへストック(データベース化)する利用、及び、サービスの契約で禁じられている利用(例:公衆送信の禁止など)は除く。

※これらのほかの許諾が必要な利用については、利用する著作物の著作権等を管理する著作権等管理事業者等が個別に窓口となります。

 

(補足)

SARTRASとしては、ライセンスできる委託レパートリーを明確にし、また、増やすための対応及び関連の対応として、次の項目を中心に進めることを検討しています。

  1. a) SARTRASライセンスの対象となるレパートリーかどうかを教育機関が容易に知ることができるよう、権利管理委託団体等のデータベースへのアクセスを容易とするポータル・サイト開設(SARTRAS WEB内)

b)a)と合わせ、SARTRASライセンスで許諾できる範囲を超える許諾についての情報提供

c)人文系の学会連合会(仮称)の設立を支援し、権利管理を受託

  1. d) SARTRASの社員を構成する団体以外の団体への委託の呼びかけ
  2. e) SARTRASの社員を構成する団体等SARTRASへ管理を再委託する団体が各自で行うレパートリー増加対策(本会のライセンスに限る委託の促進も含む)

f)ADR[7]機関設置の検討

g)相談窓口の設置

 

[1] 通学制の大学と同様の授業

[2] 教科書等(インターネット配信を含む)で学んで添削指導や試験を受ける授業

[3] インターネットを通して教員と学生が双方向でやりとりして学ぶ授業。リアルタイムに行う「同時双方向型」と、サーバにコンテンツを置く「非同時双方向型」がある。

[4] 社会人等の学生以外の者を対象とした教育プログラム。修了者には学校教育法に基づく履修証明書が交付される。

[5] Faculty Development。教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組み

[6] Staff Development。職員を対象とした管理運営や教育・研究支援までを含めた資質向上のための組織的な取り組み

[7] Alternative Dispute Resolutionの略。訴訟手続によらない紛争解決方法を広く指すもの。

 

令和3年11月9日

著作物の教育利用に関する関係者フォーラム

改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)特別活動追補版

 

【初等中等教育】

著作物を利用した特別活動における音楽・映像等の

インターネット等での配信について

 

1.改正著作権法第35条運用指針(令和32021)年度版)における特別活動に関する権利者と利用者の共通認識事項

幼稚園、小学校、中学校、高等学校等(※注1)、初等中等教育で行われる入学式、卒業式、始業式、終業式、修学旅行、運動会、水泳大会、文化祭、合唱祭等の学校行事は、一般的に、学校教育法施行規則、及び、学習指導要領に基づき各学校が編成する教育課程において「特別活動」に位置づけられるものであり、少なくともこうした教育課程上の活動は著作権法上の「授業」に含まれると考えられる(運用指針7ページ)。

したがって、改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)において、授業に関して権利者と利用者で共通認識が得られている以下の事項は、特別活動においても同様に適用される。

  • 著作権法35条の基本的枠組み
    授業の過程において、教育を担任する者や授業を受ける者(運用指針8ページ)は、必要と認められる限度内(運用指針8~10ページ)であれば、小説、脚本、論文、講演その他の言語、音楽、映像、美術、写真等の公表された著作物をコピーして配布したり、インターネット等を利用して配信(公衆送信)したりすることができる。ただし、著作物の種類(運用指針11ページ)、用途(運用指針12ページ)、複製の部数・受信者の数(運用指針12ページ)、複製・公衆送信・伝達の態様(運用指針13ページ)等に照らし、権利者の利益を不当に害さない利用(運用指針9、13ページ)であることが必要である(運用指針21ページ以降)。
  • 権利者の利益を不当に害する例

教員等が、合唱祭等で利用する楽譜等注2)をコピーして、出演する児童生徒やその保護者に配布したり、インターネットで配信したりすると、楽譜等の販売によって得られる利益に影響を与えるため、著作権者の利益を不当に害する可能性がある。このような場合、著作物の種類や用途、態様等によっては、児童生徒の人数分の楽譜等を購入するか、もしくは、著作権者の許諾を取る必要があると考えられる(運用指針11~14ページ)。

(3)授業目的公衆送信補償金の支払いが必要となる例

授業の過程において、教員が児童生徒に対し、又は、児童生徒が教員や児童生徒に対して、音楽、美術等の著作物や、著作物が含まれる映像・教材等をインターネット等で配信する場合、教育機関の設置者(自治体や学校法人等)は、授業目的公衆送信補償金を支払う必要がある(運用指針22、23ページ)。

(4)35条第3項(許諾不要かつ授業目的公衆送信補償金の支払いが不要)に該当する例

インターネット等で著作物を利用する場合でも、たとえば、教室・講堂・校庭等で活動している文化祭の映像を、不登校の児童生徒、保健室登校をしている児童生徒、病院に設置された院内学級で授業を受ける児童生徒などに対してリアルタイム(ライブ)中継する行為は、著作権法第35条第3項が適用されるため、授業目的公衆送信補償金は支払わなくともよい(運用指針22、25ページ)。

(5)教育支援者、補助者等の行為について

教育を担任する者(教員等)から指示をうけた事務職員等の教育支援者及び補助者らが、学校内の設備を用いるなど学校の管理が及ぶ形で複製や公衆送信を行う場合、教員等の行為とする。また、児童生徒等の求めに応じて、事務職員等の教育支援者及び補助者らが、学校内の設備を用いたりするなど、学校の管理が及ぶ形で複製や公衆送信を行う場合は、児童生徒の行為とする(運用指針8、13ページ)。

(6)授業参観者に対する著作物のコピーと配布・配信(必要と認められる限度)

運用指針を公表する「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」では、授業を参観する保護者等について、過去に次の点が話し合われている3

  • 授業参観時の保護者等は、一般的には児童生徒等が授業を受けている様子を参観しているのであって、著作権法第35条で規定する「教育を担任する者」、「授業を受ける者」には該当しないこと
  • 保護者等が、著作物の複製・公衆送信等の主体となる「教育を担任する者」、「授業を受ける者」に該当するか否かという解釈の議論と、著作物を配布・配信する対象として保護者や協力者等を含めて良いか否かという議論は異なること
  • 授業を参観する保護者等にも、授業で児童生徒に配布・配信した著作物と同じものを配布・配信することは「必要と認められる限度内である」と考えられること

以上から、授業の過程において、コピーし児童生徒に配布したり、送受信したりした著作物と同じ著作物を、教室で実際に授業参観する(参観できる)保護者の人数以内で、コピーを渡したり、インターネット配信することは「必要と認められる限度内」である(運用指針12ページ)。

※注1 運用指針6ページの③「学校その他の教育機関」表を参照のこと。

注2 運用指針では、<(権利者の利益を)不当に害する可能性が高いため、補償金の範囲では利用できない例>として、「授業を行う上で、教員等や児童・生徒が通常購入し、提供の契約をし、又は貸与を受けて利用する著作物について、購入等の代替となるような態様で複製や公衆送信すること」をあげている。その場合の著作物の例(特別活動等)として、演劇の脚本、読書会用の短編小説、部活動で使われる楽譜を列挙している(運用指針13、14ページ)。

注3 2019年度第3回著作物の教育利用に関する関係者フォーラム(2019年10月29日)文化庁著作権課提出資料「改正著作権法第35条の解釈について」

 

2.著作物を利用した特別活動の保護者等へのインターネット配信の考え方

初等中等教育の学習指導要領等で、学校、家庭、地域社会との連携と協力体制の構築による児童生徒の健全な育成が求められる今日においては、特別活動等の授業での学習の成果を保護者や授業協力者等に発表することは、優れた教育効果が期待できるとともに、学校、家庭、地域社会の連携を一層強化することが期待される。

また、昨今の幼稚園や小学校、中学校等の授業では、授業参観している保護者や協力を求められた地域住民に対して授業を受けている児童生徒が授業中に質問をしたり、児童生徒と保護者、協力者が作品の評価や感想、改善点を話し合ったり、協働で実習に取り組むなどしており、従来のように「児童生徒が授業を受けている様子を参観する」ことだけが授業参観の目的ではないことが多くなっている。

一方、政府は、初等中等教育において児童生徒1人1台の情報端末の配備を中心とした教育の情報化を推進している。教育の情報化の推進にあたっては、学校の授業と家庭学習、地域社会のICTを活用した連携が必要であり、ICTの活用に対する保護者等の理解と協力は不可欠である。

保護者、協力者等(来賓として招待する者や特別活動の準備で協力した地域ボランティア等)に限定して、特別活動をインターネット配信等することは、教育の情報化の一環であり、教育の情報化に対する保護者や地域社会の理解と協力体制の構築につながることが期待される。

こうした社会的背景を踏まえ、初等中等教育での特別活動時において、児童生徒の個人情報・プライバシー保護、及び、セキュリティに関する学校の取り決めに同意して参観が認められた保護者、協力者等に限定して、著作物を利用した各特別活動の映像や音声をネット・ミーティングシステム等を用いてリアルタイム(ライブ)配信する行為は、必要と認められる限度内(後述する①を参照のこと)であるというのが、権利者と利用者の現時点での共通認識である。

したがって、著作物の種類、用途、部数や受信者数、態様等が、運用指針で示された範囲内で、かつ、権利者の利益を不当に害さない範囲内(後述する②を参照のこと)であるならば、権利者に無許諾で、かつ、有償(授業目的公衆送信補償金の支払い)で、保護者や協力者等に特別活動のリアルタイム(ライブ)配信を行うことが可能である。

なお、オンデマンド型ストリーミング配信(保護者らが特別活動の様子をリアルタイム(ライブ)中継ではなく後から視聴できるようにしておく形態)の場合には、特別活動の主催者(学校長等)が、著作物の種類、用途、部数や受信者数、態様等について運用指針で示された共通認識を確認の上、必要と認められる限度において、かつ、権利者の利益を不当に害さないように、その視聴期間をあらかじめ設定し、著作権と併せて個人情報の保護の観点に関しても保護者らに事前に説明した上で実施する必要がある。この場合、特別活動の主催者(学校長等)は、視聴期間終了後に、オンデマンド型のコンテンツ(映像等)を即時抹消・破棄する必要がある。

ただし、特別活動の映像等の配信を受ける保護者等が、同居する家族等私的複製目的の範囲を超えて、権利者に無断で、特別活動で利用した著作物や映像、教材等のURLの他人への拡散、配信された映像の保存(ダウンロード)や他人への転送、画面キャプチャー、SNS等への転載などを行わないよう、特別活動の主催者(学校長等)は保護者等に事前に十分に説明し、著作権の保護に関して理解と協力を求め、保護者等から同意を得ておく必要がある。(このことは個人情報の保護や肖像権等の観点においても同様である。)

なお、特別活動の運用改善や授業実施に必要な範囲の保存ではなく、特別活動の実施後に児童生徒や保護者等に記念品等として配布する目的で、著作物が含まれる特別活動の映像、音声等をDVD等の記録メディアに保存(コピー)する場合は、著作権者や著作隣接権者注4)等の許諾が必要である。このような場合は、DVDを1枚だけ制作した場合であっても、また、一旦保護者等に回覧・配布したDVD等を後から回収し、廃棄したとしても、著作権法第35条の複製には当たらない。

注4 たとえば、市販CD音源をそのままコピーするのではなく、教員や児童生徒による演奏や歌唱を録音、録画し、映像のBGMとして利用する場合には、著作権者のみの許諾で足りるが、市販CD音源をコピー等して映像のBGMに利用する場合には、著作権者だけではなく、レコード会社等の著作隣接権者の許諾も必要である。

 

  • 文中の「必要と認められる限度」について(運用指針810ージ)

「必要と認められる限度」とは、教育を担任する教員らが自ら「授業に必要である」と判断し、その判断を対外的に説明する責任(アカウンタビリティ)、及び、外部から問い合わせ等(著作物の利用調査依頼等)があったときの応答責任(レスポンシビリティ)が果たせる範囲のことである(運用指針8ページ)。

したがって、学校長をはじめ学校の教職員や特別活動の協力者らが、教育基本法、学校教育法、及び、学習指導要領等を踏まえた学校の教育目標を達成するために実施する特別活動の活動上、著作物の利用が必要であること、特別活動の映像等を保護者や協力者にインターネット配信する必要があること等を合理的、客観的に説明できることが重要である。

そして、その説明責任や応答責任を果たすために、学校は保護者等に理解や協力を仰ぐとともに、極力、利用した著作物の出典を記録しておくことも大切である。出典の記録は、権利者が教育機関の設置者から収受した授業目的公衆送信補償金を適切に権利者に分配し、文化の発展に有効に活用するための有力な資料となるものであるので、特別活動に限らず、普段から利用した著作物の出典を記録しておくことが望まれる。

たとえば、「中学校において音楽著作物を含む運動会のダンス競技の映像をオンデマンド型で保護者に配信する」場合には、以下の<説明の例>のような説明ができる必要があるだろう。反対に、以下のような説明ができないような著作物利用の際には、権利者に連絡をとり、許諾を取る必要がある。

<説明の例>

 本校では、学校目標に基づき、教科学習、総合的な学習の時間、および、特別活動の三者をそれぞれ独立した教育活動ではなく、互いに関連づけ系統的に実施するようカリキュラム・マネジメントを行っている。特に運動会のダンス競技は、保健体育科での学習成果を発表する場として位置づけている。

運動会は子どもの安全やプライバシーを考慮した上で、生徒の保護者、及び、特別活動の協力者の参観を認めている。

しかし、実際には何らかの理由により当日来校できない保護者や特別活動の協力者等もおり、これらの方々に向けて生徒の学びの成果を発表することは、優れた教育効果が得られるとともに、学校、家庭、地域社会の連携を一層強化するためにも必要なものと考えている。

そこで、これらの方々に対して、末尾に示す演目に適した音楽著作物等が収録されたダンス競技を中心として、編集を加えるなどした運動会の映像・音声を、オンデマンド型でインターネット配信することとした。

運動会の映像・音声のオンデマンド型での保護者へのインターネット配信は、著作権法第35条の規定、改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)を参照して実施する。また、保護者への事前のアンケート調査を行い、その結果を踏まえつつ、配信期間は運動会開催日から7日間を期限とする。したがって、〇月〇日には配信をストップし、配信用映像ファイルを抹消する。

保護者には以上を丁寧に説明した上で、運動会に限らず、私的複製目的の範囲を超えて、権利者の許諾を取らずに、特別活動参観等の映像のURLの他人への拡散、配信された映像の保存(ダウンロード)や他人への転送、画面キャプチャー、SNS等への転載などは行わないよう周知し、著作権の保護に対する理解と協力を求め、同意書へのサインを得ている。

なお、授業目的公衆送信補償金については、本校の設置者である〇〇市教育委員会が〇月〇日に本年度分の支払いを完了している。

 

【配信する映像に収録される著作物一覧】

—–(※以下、曲名、作曲者名、作詞者名、演奏者名、アルバム名、発売、商品番号は、すべて実在しない架空のものである)—-

■入場行進

曲名『運動会入場行進曲』 作曲:鈴木一 イントロ部分 歌詞なし アルバム名:入場行進曲全集 アーティスト:鈴木マーチングバンド  発売:レコレコ社 商品番号:APNR-01234

■チーム入れ替え時のBGM:

曲名『入替行進の曲』 作詞:鈴木三 作曲:鈴木四 アルバム名:行進曲選集 アーティスト:鈴木マーチングバンド 発売:学校35社 商品番号:BTNR-56789

■1年1組ダンス

曲名『スマートダンス』 作曲:鈴木六 歌詞なし アルバム名:素敵なダンス アーティスト:スマートダンサーズ 発売:鈴八レコード 商品番号:DTNR-56789

曲名『中2ダンス』、作曲:鈴木六、歌詞なし アルバム名:素敵なダンス アーティスト:スマートダンサーズ 発売:鈴八レコード 商品番号:DTNR-56789

■1年2組ダンス

曲名『虎ノ門踊り』、作曲:鈴木十、歌詞なし アルバム名:東京の踊り アーティスト:十一バンド 発売:隣接権楽曲社 商品番号:ETNR-56789

■1年3組ダンス

曲名『公衆送信音頭』、作曲:高橋十、歌詞なし アルバム名:全国音頭集 アーティスト:鈴バンド 発売:コピライト社 商品番号:FTNR-56789

■審査結果発表時

曲名『結果発表マーチ』、作曲:佐藤三十、歌詞なし アルバム名:行進曲選集 アーティスト:鈴木マーチングバンド 発売:学校35社 商品番号:BTNR-56789

■表彰式

曲名『表彰の儀』、作曲:伊藤四十、歌詞なし アルバム名:運動会楽曲選集 アーティスト:サートラズ楽団 発売:凸凹音楽社 商品番号:ETNR-56789

 

文中の「権利者の利益を不当に害する/害さない」について(運用指針913ページ)

必要と認められる限度であると説明が可能だとしても、「権利者の利益を不当に害する行為」とされることがあり、その場合、権利者の許諾が必要である(運用指針9ページ)。

たとえば、特別活動の映像の保護者へのインターネット配信については、次のような場合、逐一、権利者に許諾を取る必要があると考えられる(許諾が取れないこともある)注5)

  • 著作物が含まれる特別活動の映像等をリアルタイム(ライブ)中継、オンデマンド型にかかわらず、また、視聴期限を設けていたとしても、教員、児童生徒、保護者や特別活動の協力者以外の者に配信して視聴させること(運用指針24ページ等)注6)
  • 特別活動の音楽、写真、音声、映像等著作物の必要と認められる期間を超えたオンデマンド型配信
  • オンデマンド型コンテンツ(教材)として、いつでも視聴できるようにサーバ・ストレージ等に保存しておくこと(運用指針12~14ページ)注7)

注5 映像音声の写り込みや引用の要件を満たした著作物転載(※著者名だけ記載しても引用の要件は満たさないので注意)等、著作権法の他の権利制限が適用される著作物利用については、この例から除外される(運用指針4ページ)

注6 特別活動のリアルタイム(ライブ)中継視聴用のIDやURLを保護者等に伝える場合、それら情報の伝達行為自体は著作権処理が必要となる性質ではないものの、パスワード等を設定せず、誰でも閲覧可能な学校ホームページ等やSNS等に視聴用のIDやURLを公開した場合、リアルタイム(ライブ)中継が誰でも視聴できる状態にあると解せるため、保護者等へのそれら情報の伝達や取り扱いは十分に注意する必要がある。

注7 特別活動において、教員の面前に児童生徒がいない場所(スタジオ)から自宅等の児童生徒に、たとえば、体操するためのBGMとして市販CD楽曲全部をリアルタイム(ライブ)中継で配信する場合、無許諾有償(授業目的公衆送信補償金の支払い)で利用可能である(運用指針23ページ)。一方、教員の面前に児童生徒がいる特別活動の様子を、自宅など学校以外の場所の児童生徒にリアルタイム(ライブ)中継する場合は、第35条第3項の規定により無許諾無償で利用可能である。

 

著作物の利用について学校現場で判断するためのヒント(チェックシート)

運用指針は更新される文書であるものの、全ての事例や個別のQ&Aを網羅することはできない。そのため、学校での著作物の利用にあたっては、教育を担任する教員や授業を受ける児童生徒が自ら考え判断する必要がある。

運用指針を参照しながら、たとえば、別添資料のようなチェックシートを学校で制作して、著作物の利用に際し、著作権法第35条の規定の文言・論理・趣旨を吟味しつつ、各項目を自問自答(チェック)し、論理的に考えることで、権利者の許諾が必要か否か、有償(補償金支払い)か無償かについて、多くの場合は学校現場での判断が可能であると思われる。

 

<補足1> 教育機関以外の団体等が主催するコンクール等について

著作権法第35条で規定する教育機関(運用指針6ページ)ではない団体等が主催するコンクール等での著作物の取り扱いについては、以下のように考えられる。

  1. たとえば、音楽のコンクールでは、募集要項等で提出を求められる演奏・歌唱を収録した録音・録画物に係る複製については、著作権法35条の規定の適用を受けない利用であることから、学校、または主催する団体のいずれかが適切に著作権処理を行う必要があると考えられる。音楽以外のその他のコンクール等もこれに準ずる。
  2. コンクール参加時の映像等を保護者へ配信する際についても、原則として著作権処理を行う必要があると考えられる。

<補足2> 授業における人格権等についての注意事項

運用指針では、著作者や実演家の人格的な利益を保護する著作者人格権や実演家人格権等については明記していないが、授業での作品の利用にあたっては、著作者、実演家、ならびに作品への敬意を払い、それら権利者の人格的利益を損なう可能性がある行為を控える配慮(用字・用語の変更等のやむを得ない場合を除く改変をしない。利用する場合、原則として著作者名、実演家名など氏名又は名称や、作品名を明記するなど)が必要である。

たとえば、特別活動での次のような行為は、人格権等の保護の観点からその実施を控えるか、権利者に連絡をとり、その意向を聞き、同意を取った上で実施するか否かを判断することが望まれる。

  • 公表されていない作品を複製、上演、演奏等する場合
  • 音楽作品に、権利者の名誉声望を害したり、創作意図に反する可能性がある編集等の改変や、編曲、歌詞の変更を行う場合
  • イラスト、絵画作品、写真等のトリミングや拡大縮小、部分改変等を行って複製、上演、演奏等をする場合
  • 映像作品等の見せ方(演出方法)によって作品本来の趣旨やイメージを著しく変える場合
  • 著作者や実演家の氏名や名称、作品名が判明しているにも関わらず、それらを表示せずに特別活動で利用する場合(ただし、これらはできる限り表示することが望ましいが、省略することが一般的な慣行といえる場合には、省略することも認められる)
チェック1 著作物の利用は教育機関の授業か?(運用指針7ページ等)

〇 著作権法第35条に規定される教育機関である

〇 授業(予習復習・宿題、特別活動、部活動、学童保育等を含む)での利用である

□  【要許諾】授業以外(職員会議、PTA活動、学級通信等)での利用である

( ※運用指針に基づき必要があればリストに加える  )

チェック2 教員と児童生徒のみの利用か?(運用指針24ページ等)

〇 担当クラスの教員と児童生徒のみ(授業参観の保護者、特別活動を参観する保護者及び特別活動の

学習を支援する者も含む)である

□  【要許諾】上記以外の人に(も)コピー配布、配信する

その他(               )※許諾の有無は以降のチェック事項で要検討

チェック3 著作物の種類・用途・部数・受信数・態様から見て著作権者等の利益を不当に害しない利用か?

〇 写真、新聞記事、短文、イラスト、絵画等著作物の単体での全体利用である。

〇 採択された検定済教科書に掲載されている著作物の全体利用である。

〇 著作物の部分的利用(出版物、採択外教科書、映像、音楽等)である

(  ※運用指針に基づき必要があればリストを加える   )

チェック4 著作権者等の利益を不当に害さないか?(運用指針9、13ページ)

□【要許諾】都度購入が求められる出版物(ドリル/問題集等)等のコピー配布、配信

□【要許諾】部分的利用が求められる著作物(出版物/映像/音楽等)の多くの部分のコピー配布、配信

□【要許諾】著作物全体の利用が認められる写真/短文/新聞記事等を寄せ集めて出版物のようにする

□【要許諾】(  ※運用指針に基づき必要があればチェックリストに加える  )

チェック5 インターネット配信はどのような形態か?(運用指針21ページ以降)

〇 【無償】遠隔の教室との合同授業でのリアルタイム(ライブ)中継

〇 【無償】授業での学校間交流でのリアルタイム(ライブ)中継(※1)

〇 【無償】ハイフレックス型授業におけるリアルタイム(ライブ)中継(※1)

〇 【無償】不登校児童生徒等への教室授業のリアルタイム(ライブ)中継

□【要補償金】オンデマンド(ストリーミング/ダウンロード、その他)配信/クラウド利用等(※2)

□【要補償金】リアルタイム・スタジオ型配信(※2)

※1 対面授業のリアルタイム(ライブ)中継は無償でも、対面授業を受けている生徒が自分の端末で同じ中継を見るための公衆送信は【要補償金】

※2 補償金は教育機関の設置者(自治体や学校法人等)が支払う

チェック6 著作者人格権、実演家人格権等への配慮

〇 公表されている作品である

〇 作品を改変しない

〇 著作者名、実演家名、作品名を付記する

〇 作品の趣旨やイメージを変更しない

〇 その他の行為により著作者、実演家の名誉声望を棄損しない

チェック7 その他、許諾要不要

〇 【許諾不要】引用の要件を満たした転載利用

□【個別契約】〇〇社とライセンス契約を結んでおり契約内容の範囲内での利用である

( ※運用指針に基づき必要があればリストを加える   )

チェック8 以上について合理的な説明が可能か(運用指針810ページ等)

〇  問い合わせがあった際には合理的に説明できる

□ 【要許諾】合理的な説明ができない

チェック9 利用する著作物の出典等

1.     〇〇〇〇著、『△△△△△』、□□出版、〇ページ、2021年10月1日

2.    ・・・・・